ー 記事の対象 ー
トレーラーハウス検討中の方
自前型ノウフクをされている方
事務所をトレーラーハウスにする理由
自前型ノウフクの現場では、畑の中や傍らにトレーラーハウスを置き、事務所として用いられている事例が少なくありません。トレーラーハウスとは「車輪がついていて自動車でけん引ができる住まい」のことです。
もちろんトレーラーハウスがあれば、休憩所やトイレの確保もできますが、なぜ建物を建てたりせずに、トレーラーハウスなのでしょうか。
本記事では、農福連携でトレーラーハウスを導入する理由とそのメリット・デメリットをお伝えします。
農福連携ご担当者が知るべき農地法
自前型の農福連携をされる場合、農地法第3条を考慮しなければならない場合があります。
農地法第3条は長いので、冒頭部分だけ転載しますね。
【農地法第3条】
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
具体的に理解しておかなければならない点は、障害者のための休憩所やトイレを勝手に建てることが違法になるということです。
農地には許可なく建物を建てられないのです。農具を入れる倉庫を建てるといった行為も建築物として扱われる可能性があります。
そこで出てきたのが、トレーラーハウスを農地に設置するというアイディアでした。
トレーラーハウスは建物ではなく、「車両扱い」なので、車を農地に停めているといった形になります。農福連携の現場にトレーラーハウスがある理由には、こういった背景があるのです。
農福連携ご担当者が知るべき建築基準法
家にただ車輪をつけても、それはトレーラーハウスとは言えません。
どのような基準で、これは建物なのか、あるいはトレーラーハウスなのかをおさえておく必要がありそうです。そこで建築基準法にも少し触れておきましょう。
【建築基準法第2条】
建築物:土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
建築物の定義が上のようになされているため、トレーラーハウスが建築物にならないように気をつける必要があるのです。つまり、
【建築物に該当しない条件】
1、随時かつ任意に移動できる状態で設置し、それを維持継続すること。
2、土地側のライフラインとの接続が工具を使用しないで着脱できること。
3、適法に公道を走れること。
の条件をすべてクリアしなければならないということです。
農福連携ご担当者が知るべき道路運送車両法
すでに法律がいっぱい出てきておりますが、これで最後です笑。
もうしばしお付き合いください。
上の条件に挙げた「適法に公道を走れること」は道路運送車両法にも関わってきます。
【道路運送車両法のトレーラーハウス定義】
保安基準第2条制限以内のトレーラーハウス
車幅2500mm以下
全長12000mm以下
高さ3800mm以下
の場合は車検を取得できる大きさの為、公道を走行する場合、安全基準を満たし車検を取得して運行しなければならない。
車両とみなされるためには、最大のトレーラーハウスでも全長12m以下にしないといけないので、それでも手狭な場合は複数のトレーラーハウスを設置する等、検討してください。
ここまでイメージできましたでしょうか。
まとめると、農地には勝手に建物を建てられない(農地法)ので、建築基準法と道路運送車両法をクリアした形でのトレーラーハウスを設置する選択肢もあるということです。
トレーラーハウス設置の注意点3選
☑運搬道路の確認
☑地盤の確認
☑車検
巨大なトレーラーハウスを圃場まで運ぶ際、当然そこまでに至る道路がある程度広くないと、運搬することはできません。事前にトレーラーハウスがどのルートを通って運ぶことができるか、確認しておきましょう。
また、いざトレーラーハウスを圃場に設置しても、畑の土ではその重量に耐えられず、地面が沈んでいってしまいます。トレーラーハウス下は砂利やコンクリートで補強することが一般的です。
最後に、トレーラーハウスは車両扱いですので、もちろん車検をとる必要がでてきます。
車庫証明のための所有者と使用者も明確にしておきましょう。この場合、圃場から2㎞以内に公共料金をきちんと支払っている場所が必要です(賃貸可)。また、車検の度に動くかどうかの確認作業が入ってきますので、トレーラーハウスを動かせる空間も圃場内に求められます。トレーラーハウスの車検の度に畝を壊すことがないよう、作付計画の際はこちらも視野に入れていただければと思います。
都心型の農福連携においてはトレーラーハウスの設置位置を近隣住民と共有した上で、進めた方が無難です。ひとつひとつクリアしていければ、障害者が安全に安心して農業ができる環境ができますよ。
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