ー 記事の対象 ー
自前型で農法を迷われている方
自然農法・有機農法の農福を検討されている方
企業が知るべき農法の基礎知識3選
☑自然農法
☑有機農法
☑慣行農法
農業の目的が異なれば、その方法も異なってきます。
今回は上のように3つに農法を分類して、農福との相性を考えていきたいと思います。
一般的に自然農法や有機農法がよいとされる風潮が農福連携にもありますが、まずはそのような先入観をリセットして、記事を読み進めてくださいね。それでは始めていきましょう。
自 然 農 法
自然農法とは文字通り、自然の摂理に則った農法になります。
したがって、農薬はもちろんこと、肥料もまきませんし、不耕起といって畑を耕さないことも珍しくありません。つまりは一切あるいはその大半を自然に委ねているわけです。
人が自然を解読するのではなく、無為自然で過ごすべきだという世界観ですね。この農法の根幹には、そもそも自然に任せておけば、自ずとよくなっていくという考えがあるように見受けられます。
このような姿勢をとる農法は、一般的に以下の3つに分けられているかと思います。
1、自然農法:無除草・無摘果・不耕起・無肥料・無農薬
2、自然農 :不耕起・無肥料・無農薬
3、自然栽培:無肥料・無農薬
無肥料という点では多様な考え方が垣間見えまして、動物性肥料は等しく避けますが、例えば米ぬかなどを土に混ぜるのは、これは無肥料か否かという議論は実際になされています。
耕作放棄地が増えている今、人為的に何かをしなければ圃場は荒れる一方ではないかと感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、百年スパンで自然の営みを考えた場合、幾世代もの生命の循環を経て、土壌はよくなる傾向にはあります。
本来の自然界では腐植が土をよい香りにし、そこを通った雨水が海の植物プランクトンや藻をより育み、最終的には動物プランクトンや魚介類も元気になっていくわけです。
圃場の場合も、大概は荒れ果てた地にまずイネ科の草が育ちはじめます。彼らは根がまっすぐ長く伸びる性質がありますので、その根が土を耕し、やわらかくしているとも表現できるかもしれません。また、枯れ朽ちていった草木は分解されながら土の養分にもなっていきます。
したがって、自然農法の農福連携では除草した草を破棄せずに畝に乗せ、草マルチとして扱うことも少なくありません。草がマルチと土壌改良の両方のロールを担っているわけですね。根が土を改良していくため、その除草方法もハサミなどで草の根元を切り、根はそのまま残しておくといった方法がとられることも多いです。
食糧危機の可能性も話題になる昨今ですが、元手がかからない自然農法は農福に限らず、今最も注目すべき方法なのかもしれません。
有 機 農 法
有機農法というのは、化学的に合成された肥料や農薬を用いずに野菜を育てる農法のことです。この農法でできた野菜が有機野菜やオーガニック野菜と言われたりしているわけです。
我が国の場合、オーガニック食品として販売するためには農水省が定める有機JAS認定をとる必要があります。
ところで最近、ふかふかの土のうえに立ちましたか?
ふかふかした大小の団子の粒粒がある土はよい畑の証です。
団粒構造といいます。
よい土にはよい微生物がおり、虫が棲み、雑草も根がはり、鳥がそれをついばむといった自然の循環が生まれます。そのような循環を生みだすのが、自然農法や有機農法なのです。
「生きる土台にあるのは土である」といったのはヘニッヒですが、多様な微生物が生きている土こそ、共生社会の実現を目指す農福連携にとって最適とする考え方にも触れておくとよいでしょう。多様な生物が共生する土のうえで、多様な人々が活躍しはじめています。
そもそも「土」という漢字は、白川静によると土を団子のように縦長に丸めて台に置いた景色から生まれました。それを神様として手を合わせたのです。
昔は、土を神様の代わりとして見立てていたのがわかりますか。
このような方法をシロ(代)といいます。正確には団子のように丸めた土そのものを神様としたわけでなく、どちらかというと神様がやってくる際の目印として用いられていたようです。そこから苗代という日本独自の概念が誕生したのです。
この章はヘニッヒの言葉で〆ましょう。
古来、人が幾千年も耕してきた土がたかだか数十年の近代農法の果てに毀され、死滅しようとしている。土壌の腐植は減り、保肥力や保水力が失われ、化学肥料由来の物質が河川や地下水、海の汚染をしていく。つまり、人類は飲料水を失うのである。
慣 行 農 法
慣行農法とは化学的な肥料や農薬も使用して、安定的な生産が実現できる農法になります。
ここまでの話の流れですと、有機農法が善で、慣行農法が悪だという思考になりがちですし、実際にそのような風潮もありますが、そのようなことはまったくありません。そもそも私たちの食卓は慣行農法に支えられています。
自然農法や有機農法は最初の一年目では採算が合わないことが多く、そこに農福連携をかけ合わせたとしても事業にならないことがあります。特に、もともと慣行農法をしていた畑を急に自然農法に一変させた場合は、より難しくなってきます。
障害をお持ちの方が有機農法をしているというと聞こえはよいですが、持続可能性に繋がらないのであれば、やはり慣行農法と農福連携の組み合わせを考えるべきでしょう。援農型においは、慣行農法をされている農家もご多分にもれず人手不足です。農福連携で慣行農法を支えていかなければ、農業の持続が難しくなってくる地域も少なくありません。
農 福 と の 相 性
さて、農法を大まかに見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
農福連携との相性を考えたとき、そこにはやはり配慮が必須です。
例えば、圃場には虫がつきものですが、虫が好きでたまらない障害者もいらっしゃれば、かなり虫が苦手な障害者もおいでになります。これを踏まえれば、前者の方には虫の営みも土壌づくりの一部としている自然農法や有機農法が、後者の方には農薬等で虫を防いでいる慣行農法が合っているのではないかと仮説を立てることができます。
土壌豊かな自然の上で日々、作業できる環境は障害を軽減させる可能性もあります。このような観点で考えれば、やはり自然農法や有機農法を選択するべきです。
また、安定的に農作物を供給し、安定した収入を得て、その一部がきちんとご自身の工賃や給与に反映されるといった経験も障害をお持ちの方にとっては非常に大切な機会になります。このような観点で考えれば、やはり慣行農法の方がその特色を出しやすいでしょう。
ここにも何のために農福連携をしたいのかという目的が密接に関わってくるのです。
▶参考記事:ノウフクのはじめ方ロードマップ
▶推薦図書
『生きている土壌』
ーエアハルト・ヘニッヒ著